締め切り……。いや、締切じたいはわりとあるでしょ。あるけど、ふだんはあんまり意識されていないというぐらいな気はする。
具体的に言うと、さまざまな新機能開発については、いちおうこのバージョンで出しましょう、というターゲット設定はあって、それはいちおう締め切りっぽくはなってる気がする。ただし、締め切りに間に合わなかったら、あきらめて次のバージョンまで待つ、といったことになる。Chrome / ChromeOS は6週間ごとにアップデートすることになっているので(最近4週間サイクルになる発表がありましたが)、締切に失敗したといっても次のバージョンはせいぜい6週間後ということになる。
そういうわけで、目標は設定されてるけど、わりと気軽にずれていくというぐらいになっているんではないかな。多少ずれても、一般ユーザの視点からはほとんど気にされることがない。でも締め切りがまったくないわけではない。というぐらい。あと最近しばらく性能改善や性能測定・性能テストなど内部向けの仕事をしていたけど、こういうものだと締め切りはまあ全然ないかな。
kzysさんも書いていたが、昨今のソフトウェアはリリースサイクルが短いので、締切というものがあっても、それに対する立ち位置というのが通常とちょっと違う、といったことは起こりがちかもしれないなと思う。もっとも、サーバサイドのプロジェクトなら、会社やチームにもよるだろうが毎週とか毎日とかいったリリースをしているところも普通だろうし、それにくらべたら6週間というのは随分ながいように思えるだろう。でも過去の、年1回とか数年に一度のアップデートに比べると、ずいぶん違う。更新もユーザから見たら自動的に起こるし。
ただOSの仕事の場合、たまにちゃんとした締め切りのある仕事もある。それは新機種。
かなり昔の例だけど、一番最初のChromebook Pixel (2013年)は、はじめてのタッチスクリーンつきChromebookであったし、同時にはじめてのHiDPIモニタ搭載Chromebookであった。なので、タッチイベントサポートとか、HiDPIサポートとかの機能は、ないと意味がないので新機種に搭載するバージョンには絶対に入ってないといけない。そしてハードウェアの発売日はあんまりずらせないし、出荷のことから逆算したバージョンが降ってきてそれまでにやらないといけないようになっている。そういうわけで、ちゃんと締め切りのある仕事になっていた。Chromebook Pixel (2013)はタッチスクリーン+HiDPIという組み合わせがすごいので、かなり特殊な新機種リリースではあったが、ほかにも新機種にともなう締切仕事というのはそこそこある。わたしも、何度かはそういう仕事をやったりしている。
ただ、そのわりには締め切り厳守がすごく厳しくてデスマになっている……というほどでもない気もする(つらい状況になってる人がいないわけではないだろうけど)。どうしても必要なコア機能、重要なバグ、どうしてもやばいやつだけを直し、あとで直さないといけないものは結局puntしてしまったりする。OSは自動アップデートしていくので、致命的でない問題やレアな問題、ラフな部分があっても、意外と気づかれずに世に出ていって6週間後に人知れず直っていったりするのだった。自動更新は、リリースマネジメントやバグトリアージの考え方をずいぶん変えたのかもしれない。