人に言われたことはあんまり覚えていないんですが、自分で信じていたけれど、振り返ってみるとそうでもないものは結構あるかもしれない。
35才定年説: ないわけでもない
日本のプログラマ業界には「35才定年説」というのがあって、という話は昔に morrita さんが書いていたけれど
定年説を事実として扱う文章は、主に転職斡旋業者が運営するサイトに見られる。一方で定年説を否定しようとするのは、主にプログラマのブログなど当事者のサイトだ。
私は転職斡旋業者よりはプログラマのブログを読んでいたので、35才定年説というのは他人事だと信じていた。
それで、35才をすぎて周りを見渡してみると、結構プログラマをやめてしまっている人が多いことに気づく。一緒にチームで働いていた人々から、カンファレンスで見かけるようなスターまで、すっとマネージャーになっていたりする。
私自身はマネージャーにはならなかった。ならなかったけれど、一方で、結婚して外国に引越して子供ができて、業務時間後や週末に勉強会に行くようなプログラマからは「引退」してしまっている。仕事では5時でパッと終わらせて、趣味でたまにブログを書いたりするくらい。
35才、みんなが定年するわけではないけれど、周りを見渡したときに、ちょっと風景が変わってしまう年齢のように思う。
技術は好き嫌いなく: ローリスク・ローリターン
私は「プログラミング言語などの技術は適材適所で、好き嫌いなく学びましょう」というのを結構長らく信じていた。分散投資でリスクを低く、というともっともらしいし、CSS + HTML + フロントエンドの JavaScript + SQL + サーバーサイドの JavaScript 以外の言語を全てやって、はじめてやっと Web 2.0 っぽいソフトウェアが書ける、という時代だったことの影響も少しはあると思う。
ただ、今になって振り返ると、リスクの低い投資はリターンも低くて、自分がそれにどれだけ自覚的だったかというと疑問がある。仕事で使っている言語について、ブログを書いて、本を書いて、日本なんとかユーザー会に参加して、みたいに全賭けしてたらどうなったかなあと思うことはある。取らぬ狸の皮算用ですが。
あえていうなら、私は英語にまあまあ賭けていて、今はアメリカに住んでいる。こっちは現在進行形で、だいぶハイリスク・ハイリターンな賭けをしているなあと思う。
仕事でオープンソースできるのはスーパープログラマーだけ: そうでもない
なんかちょっと寂しい感じになってしまったので、最後はちょっと良い話でも。
私の仕事は、結構な部分がオープンソースになっている。昔は、仕事でオープンソースができるのは、まつもとゆきひろさんとか平林幹雄さんとか、自分のソフトウェアがヒットした一握りのスターだけと信じていた。
しかし今は、オープンソースに対する理解であるとか、オープンソースなソフトウェアが増えた結果、仕事でオープンソースができる人の裾野はだいぶ広がったと思う。少なくとも大企業には結構オープンソースなプロジェクトがあり、Apple でプログラミング言語の開発に関わろうとしても、Microsoft でエディタをやろうとしても「仕事でオープンソース」が出来る。
もちろん、そういう大企業に入るのはそれなりに大変だけど「自分のソフトウェアをヒットさせる」なんて目標に比べると、ずっと手の届くはなしだと思う。